ぬいぐるみカフェ

Posted By on 2011年10月31日

日曜の昼下がり、わたしはものすごく機嫌がわるかった。
もっというと、むしゃくしゃしていた。
理由は単純だけど、昨日、恋人の戸田くんと大喧嘩をしたからだ。
付き合ってかれこれ一年になる戸田くんの野郎はなんと、わたしの名前の漢字を覚えていなかったのだ!
それは、昨日の授業中に戸田くんから回ってきたメモに書いてあった。
「春奈さん 
今日一緒に帰れるかな? 
戸田より」
わたしの名前は、春菜だ。
そう、たかが漢字間違い。
人間は完璧じゃないし、間違うこともある。それはよくわかってる。
でも、一年も一緒にいるのに、こういう間違いはひどすぎる。
(戸田くんてば、実はわたしに関心がないんじゃないの?)とも思うし、
誕生日を知らなかったとかいうレベルではなく、わたしという存在に関わる根源的なショックだった。
何よりも、他の誰でもない戸田くんが。
それとも、自分の名前を当たり前のように大事にして欲しいと思うのは、わたしだけなのだろうか。
イライラしすぎて頭に血がのぼり、メモを丸めて斜め後ろの席の戸田くんに投げつけ、授業をストップさせるぐらいの声で「戸田くんのバカ!」と怒鳴った。
呆然としていた戸田くんは、休み時間になってからわたしに泣いて謝った。
戸田くんに悪気はないとわかっていても、まるで気がおさまらないという状態のわたしに戸田くんは言った。
「あのっ。ほ、ほんとにごめん……。そうだ! 明日、一緒に出かける約束してただろ。
行ってみたい場所があるから、そこだったら春菜さんも機嫌直してくれると思う!」
約束なんてすっぽかしてやりたいぐらいだったけど、
「絶対に楽しませて、名誉挽回するから!」と言ったので
(そこまで言うなら、お手並み拝見させてもらおうじゃないの)と、いじわるな気持ちになった。